Metropolis
 

てくてくと軽い足取りで進む天の後ろを4人は歩く。
他の神獣たちもどこか気を研ぎ澄ましている様子で、空気がピリピリとしてる。
小枝の折れる小さな音でさえ、妙に大きく聞こえてきて、
梅流はふっとその方向を見てしまう。
亜梨馬と戒厘は、つねに周囲の気の流れに意識を集中している。
杏は、いつでも結界がはれるよう身構えていた。

突然、天の足が止まった。
うーっという唸り声をあげ、戦闘態勢に入っている。
亜梨馬は天の傍により、軽く背中を撫でた。

「大丈夫だ。敵じゃない」

天が向いている方に静かに近づくと、木の陰に、精霊が小さくうずくまっている。
亜梨馬は精霊にそっと手を出した。

「恐れることはない。オレたちはお前に危害を加える者ではない」

子供の姿をした精霊が、ゆっくりと顔をあげ、泣き腫らした瞳で亜梨馬を見つめた。

「おぬしは誰ぞ?我はヒバの精なり。森に妖獣たちが闊歩し、住処を追われた。
仲間は散り散りになり、我は1人、ここに取り残された」

膝に顔をうずめ、またしくしくと泣き始めた。
亜梨馬は精霊を抱きかかえ、みんなの所に戻った。
当然、視線は精霊に向けられている。
杏がそっと精霊の頭上に手をかざし、何か温かい光を放つと、精霊は泣き止んだ。

「お前、名は?」

亜梨馬は精霊に聞くと、消え入るような小さな声でささやいた。

「麗蘭(れいらん)…」



書きこみ日・・・2002/01/08

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